今日は死への旅/アガサ・クリスティの読書感想文を書きます。

この本はアガサ・クリスティ作品のノン・シリーズのスパイものの長編です。
不穏なタイトルですが、いわゆるミステリではなく、ポアロやミス・マープルといった有名なキャラクターの出てきません。
また、スパイものといっても危険な潜入やアクションは少ないのですが、それが何だかしっとりとした味になっていて、結構好きな一冊かもしれません。
舞台は東西冷戦下、そんな中優秀で若い科学者の連続失踪事件が起こります。
一方で夫の浮気、そして娘の死に胸を痛め、希死念慮を抱えながら英国を飛び出した女性ヒラリー。
彼女の美しい赤毛が失踪した科学者の妻に似ていたことから、連続失踪事件を解決するためにスパイとして潜り込むことになります。
主人公のヒラリーはとてもおとなしい女性です。
スパイになったきっかけも、『どうせ死ぬつもりなんだったら死亡率の高いスパイ任務があるから、これをやって死んでくれ』(意訳)と言われて、じゃあ…と引き受けたから、というくらい受動的。
間違っても、(クリスティ作品のスパイものの主人公である)トミー&タペンスシリーズのタペンスみたいにアクティブに動き回るような女性ではないです。
しかし、スパイとして活動を続けるうちに彼女の内心にも変化が生まれてきます。
最終的には大富豪のアリスタイディーズと渡り合うまでになります。
おとなしいけど芯の強い女性って素敵ですよね。
スパイものといっても派手なアクションもなく、どこかSFっぽさを感じされるような非現実的な雰囲気と旅情が混在していて、不思議な魅力のある一冊となっています。
ラストも希望のあるもので良かったです。


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